第9回 ISO/CD14001:2013の要求事項の概略

今回は、ISO/CD14001:2013(委員会原案)要求事項の概要を現行の要求事項と比較し、特徴的な違いを明らかにしたいと思います。最新情報の提供を重視するならば、最新の原案で検討するべきですが、このコラムでは、CD1、FDISの順番で検討を加えることで変化を明らかにすることを重視するため、敢えてCD1を最初に比較検討したいと思います。

ISO/CD14001:2013の要求事項の概要は下表の通りです。(以下本章では特に注記のないかぎり改訂版と表示します)

第9回 ISO/CD14001:2013の要求事項の概略


ISO9001と同様に、1.適用範囲~3.用語及び定義の構成は変わりません。要求事項の構造もPlan(計画)、Do(実施)、Check(監視・測定)、Action(改善)で分類出来ます。即ち、4.組織の状況、5.リーダーシップ、6.計画がPlanにあたります。ISO14001独特の要求事項である環境側面や環境影響評価は6.計画の章に記載されています。自社が環境に与える影響を評価した上で具体的な取組み計画を策定するという構成は現行の要求事項と変わりません。以下7.支援と8.運用はDo、9.パフォーマンス評価はCheck、10.改善がActionにそれぞれ該当することはISO9001と同様です。

以下に要求事項の構成から分かる特色を挙げていきます。

(1)ISO9001との章構成の同一化
ISO/CD9001:2013とISO/CD14001:2013の章構成を比較すれば一目瞭然ですが、14001改訂版では、9001改訂版と章構成が一致しています。現行のISO14001はマネジメントシステムの態様を重視した規格としては、ISO9001より先駆けていました。しかし、ISO9001も2000年版の改定によりQMSの態様重視を明らかにしたことにより、こちらがマネジメントシステムの要求事項としてスタンダードなものとなってきました。後に発行されるISO22000(食品安全マネジメントシステム)などの規格の章構成はこれに倣ったものとなっています。その結果、現行のISO14001はマネジメントシステムを重視した最初の規格でありながら、他のマネジメントシステムに比べて特異な章構成となってしまったのです。このことが、両方のマネジメントシステムを構築・運用するに当たっての障害となっていました。改訂版による章構成の同一化は9001と14001両方の規格を持つ企業にとっては大きなメリットです。

(2)改定内容自体は小幅である
改訂版と現行の要求事項では、若干新たな要求事項が追加されているものの、内容的には大きな変更はありませんでした。ISO14001がマネジメントシステムとしての完成度が高かったことの証左と言えます。しかし、章構成や条文の書き方は、大幅に変更されており、外見上は現行版の面影が感じられないほどの大改定となっています。これまでISO14001だけを運用していた企業にとっては今回の改訂が負担に感じられるかもしれません。しかし、章構成変更の主旨はハイレベルストラクチャーの具現化であり、各要求事項の内容の変更を意図したものではありません。従って、現行の要求事項の主旨をよく理解していれば、順番が変わっただけで対応にあたっても大きな負担とはならないはずです。

(3)外部発信の要求事項の追加とバリューチェーンの明確化
改訂版で追加された要求事項は、環境情報発信に関する2つの要求事項です。即ち7.4.3外部コミュニケーション及び報告と8.2バリューチェーンの計画及び管理です。この2つの要求事項が追加されたことにより、以下のことが明らかになりました。

①環境活動の報告重視
②バリューチェーンの明確化と委託先・供給先管理の重視

環境活動の外部に向けた報告はISO14001では、企業の裁量に任せてますが、EMAS(EUの環境管理制度)及びこれに倣ったエコアクションなどの規格では、環境レポートとして制度化されています。外部コミュニケーションに「報告」を強調したのはこれに合わせたものと言えます。バリューチェーンの概念は項を改めて考察する予定ですが、現在の企業系列による製造形態では、いくつもの企業が付加価値を付けて、最終的に一つの製品に集約されます。最終製品を組み立てる企業がいかに環境を重視した活動や製品の供給に努めたとしても、それらを構成する部品や途中の加工を行う企業が環境に配慮しなくては、トータルで見た環境負荷は低減されません。8.2項に「バリューチェーン」という文言が追加されたことはこのような考え方を重視したものと言えます。

(次回更新予定 2014年4月14日頃)


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