第18回 管理責任者の負担
前回までの内容で一通り要求事項を見ていきました。参考にしたのがCD(委員会原案)であったため、今後も変更があることが予想されますが、変更の主旨と方向性は明らかになりました。今回は、要求事項から離れて実際に改定作業にあたる管理責任者の負担について考察したいと思います。
管理責任者の負担は大きく分けて、要求事項変更に伴うマニュアル等の改定作業などの事務作業的な負担と、改正の趣旨を組織に浸透させて実践させる運用面の負担に分けられます。
(1)事務的な負担
要求事項の番号が変わるため、要求事項に沿った品質マニュアルを運用している組織では、当然変更の必要性が出てきます。また、要求事項の中にはこれまで明言されていなかった事項も要求事項になっているため、加筆する部分もあります。これらの事務作業は、管理責任者にとって確かに負担となりますが、これまでの要求事項の概念と全く相違するようなものはないので、新旧の要求事項の対比表のようなものを入手すれば比較的容易に修正作業は進むのではないかと思います。また、ISO9001とISO14001をともに認証している組織にとっては、マニュアルや文書を統合化し、業務効率を上げる格好の機会となります。
(2)運用面の負担
運用面の負担は、現在のISOの運用状態で大きく変わってきます。例えばISO9001では、品質目標・計画を策定するに先立ち、組織を取り巻く環境の変化やリスクを分析をすることが求められるようになりましたが、ISO9001を戦略マネジメントのツールとして活用している組織であれば、既に通常のマネジメントサイクルの中に組み込まれているものであり、なんら目新しいものではありません。しかし、ISOを認証の維持のために活用していた企業にとっては、目標・計画自体が前年を踏襲したものであることが多く、リスク分析等は全く新たな要求事項として負担が追加されたように感じられるでしょう。このように、現在の運用状況で負担の捉え方が異なってきますが、現在の運用状況に疑問を感じている組織のほうが、啓発の余地が大きい分、ISOの実質的な価値を大きく高められるのではないかと考えます。
(次回更新予定 2014年9月22日頃)
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