第4回 ISOと企業戦略①

ISOは本来、組織にマネジメントシステムを導入することによって、業務の効率化や戦略的な人材育成などに役立てるためのものです。しかし、ISOが浸透していく過程の中で本来の目的を忘れ、せっかくのマネジメントシステムの機能を形骸化させている組織も少なからず見受けられます。なぜこのような状況を招いたのでしょうか?

①ISOの本来持つ機能
ISO9001は1987年に第1版が発行されましたが、日本では第2版である1994年版から一般に知れわたってきました。この頃のISOは主に輸出関連の大手製造業が取得するものというイメージが強く、一般には品質保証のためのシステムと捉えられがちでした。しかし、90年代後半位から、中小の製造業に広がっていくとともに、製造業以外の業種の認証登録も増えてきました。このような流れを受けて2000年に改定された第3版によって顧客要求を満たす製品や活動をマネジメントするシステムとして認識されるようになりました。
ISO14001は、地球サミットで採択されたリオ宣言に基く各国の取組みに対応するために国や業界を挙げて推奨されました。ISO14001は、組織が環境に影響を与える製品や活動を管理するだけでなく、個別企業にとってもコスト削減のメリットが得られるため、短期間に急速に広まりました。ISO9001もISO14001も方針を立て、実現に向けた目標と計画を策定しますが、ここに企業の意図する戦略を盛り込むことで顧客満足の向上による販路の拡大やコスト削減による収益体質の強化などに役立つ機能があるのです。

②ISOと経営戦略の乖離
ISOは独立した第三者による認証制度であり、一定水準のマネジメントシステムを持ち、維持していることの証明となります。このようなISOの持つ特性は大手企業が取引先を選別するためのツールとしても非常に便利なものです。また、選定される企業側にとっても、他社との差別化をアピールするために有用なものとなりました。しかし、このような差別化や顧客選別ツールとしての機能が優先され過ぎると、認証の看板を維持することのみが目的となり、本来の目的である戦略的な計画や継続的改善などが重要視されなくなります。
 
残念ながら認証取得企業の中には、形式的に運用する企業も見られるようになりました。このような企業では会社としての戦略とISOの計画は全く別物とされていることが多くなっています。2015年改定では、形骸化したシステムを運用している企業が、マネジメントシステム本来の機能を再認識する機会となります。しかし、主旨を理解しないで、追加された要求事項を形式的に実践するだけでは、事務処理が増えるだけです。

次回は、企業戦略をどのようにISOと結びつけるか考察を加えたいと思います。

(次回更新予定 2014年2月3日頃)


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