今回は、ISO/CD9001:2013(委員会原案)要求事項の概要を現行の要求事項と比較し、特徴的な違いを明らかにしたいと思います。
ISO/CD9001:2013の要求事項の概要は下表の通りです。(以下本章では特に注記のないかぎり改訂版と表示します)
1.適用範囲~3.用語及び定義の構成は変わりません。実際の要求事項は4項からになります。要求事項の構造は現行の要求事項と同じようにPlan(計画)、Do(実施)、Check(監視・測定)、Action(改善)で分類出来ます。即ち、4.組織の状況、5.リーダーシップ、6.計画がPlanにあたります。この中で4.組織の状況には「組織とその状況の理解」が含まれていますが、これは計画の前段階として自社を取り巻く環境を把握する必要があることを強調したものと考えられます。Doの実施は、大きく分けると7.支援と8.運用に分けられます。9.パフォーマンス評価はCheck、10.改善がActionにそれぞれ該当します。要求事項の中には、新しく追加されたものもありますが、殆どの要求事項は現行の要求事項にもあるものです。しかし、章構成や分類には変化が見られます。これは、今回の改正の趣旨を具体化するものであり、なぜこのように変化したかを理解することで改正の趣旨を理解することが出来ます。以下に要求事項の構成から分かる特色を挙げていきます。
(1)PDCAサイクルをさらに強く意識した構成
現行の要求事項では5.経営者の責任の項目に経営者自身が実施するべき事項をまとめています。この中でマネジメントレビューはPlanではなく、Check とActionに該当しますが、改訂版では、このことを明らかにするため、9.パフォーマンス評価に記載されています。現行の要求事項では、経営者の役割を5.経営者の責任の項目にまとめることで責任所在の明確化を重視していますが、改訂版ではマネジメントサイクルの順序を優先しており、一層PDCAサイクルを意識した構成になっています。
(2)計画の実効性の重視
品質方針を実現するための目標・計画は現行の要求事項では5.経営者の責任にまとめていますが、改訂版では計画に関する要求事項は6.計画で独立した項目を設け、ここにまとめる構成になっています。また、新たな要求事項として、リスクや機会のへの取組みが入っています。既にこのコラムでも取り上げたリスク管理や戦略と計画の統一化の志向が見られ、計画の実効性を重視していることが明確にしたことが窺えます。
(3)支援プロセスの明確化
現行の要求事項で「資源の運用管理」に該当する項目として7.支援があり、従来の人、設備、作業環境の管理に加え、文書の管理も含まれるようになりました。教育・訓練体制や内部コミュニケーション体制、文書管理等は運用に直接関わるものではありませんが、円滑な運用やパフォーマンスの維持のために不可欠なものであり、これを支援プロセスとしてまとめています。支援プロセスは、環境マネジメントシステムなどの他のマネジメントシステムと共通する項目であり、このように支援プロセスの項目でマネジメントシステムに共通する事項をまとめたことは、複数のマネジメントシステムをもつ組織に配慮したものと捉えることが出来ます。
(次回更新予定 2014年4月1日頃)